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A Day in the Life/The Beatles

進学校のF高校なんかに合格してしまったので、親が喜んで、入学祝に本格的なオーディオ・コンポーネントを買ってくれた。物凄く大きな音がするのでびっくりした覚えがある。

この曲を初めて聴いたのは、高校に入学したばかりの15歳の時。1977年だ。ビートルズの“SGT. Peppers Lonely Hearts Club Band”が世に出てちょうど十年の歳月が流れていた。この曲、ヴァースをジョンが書き、中間部分をポールが作曲した。この世の終りのような狂気じみたオーケストラの音に、僕は度肝を抜かれた。何だこれは。僕は、これこそがロックなのだと思った。伝統の破壊と再構築。常識や既成概念を根こそぎ塗り替えたような音楽。あの大プロデューサー、ジョージ・マーティンがよくこんな型破りな音楽作りを許したと思う。

歌の中で名車ロータス・エランを110マイルでぶっ飛ばし、信号待ちの車の列に突っ込んだギネス家の嫡男だった、21歳の青年。歌われているのは、現代が孕んでいる狂気である。あまりに陶酔的で麻薬の高揚感を感じさせる演奏は、発表されて間もなくBBCで放送禁止になった。

低くチューニングされたティンパニのように聞こえるリンゴのタムの音。ジョン・レノンのヴォーカルは深いエコーがかけられ、あまりに幻想的で美しい。そのあと、現実に引き戻されるようなポールの歌。後に続くジョージ・マーティンのアイディアによる間奏はこの上もなくドラマティックで、ロック史上もっとも感動的な時間だったかも知れない。ふたたびジョンの歌になり、袋小路に迷い込むような、不思議な詞が歌われ、最高潮の盛り上がりを見せたオーケストラの音が突然終ると、矢継ぎ早に幾台ものピアノが一斉にEの和音をダーンと弾き、それが長い、長い余韻となって終る。

僕は呆然としたまま、窓辺に雲を見ていた。